- 透析JOURNAL
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- 再生!勝てる組織づくり
- 監督はチームの躍動を演出する
4.監督はチームの躍動を演出する
自分がすべきことを常に考え続ける
- 櫻堂
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組織の中で良い緊張感を保つのは、医療機関でも会社でもとても難しい。特に医療組織はライセンスを持つ人たちの集団だから、ライセンスを取ったとたんに自分たちの将来は安泰だと考えがちです。そうした人たちの中で緊張感をどう維持していくかは大きな課題です。
選手たちをマネジメントするとき、監督は「場」という表現をされています。ときにそれは目標だったりもするようですが、場の仕組みというのは意図的につくられるのでしょうか。
- 清宮
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そうです。わかりやすい目標はチームの熱を高め、激しい競争をするためであったり、あるいは物事に本気で取り組むためです。だから場は試合だけではありません。人前で発表したり、講演するのも場です。チームが躍動するための機会をつくるのが監督の役目だと考えているからです。
昨年、フランスでW杯がありました。本物の空気を感じさせるために、どうしてもその場に選手たちを連れて行きたいと考えました。本当にそれができるチームはトップリーグではチャンピオンしかありません。ところが昨年、サントリーは2位でした。当然、経営陣の回答は「ノー」でした。「優勝してないだろ」と。
私は4年に1回の「本物の場」を選手たちに経験させたかった。連れて行けば、そのうちの何人かが4年後のW杯に日本代表として出場するはずなのです。あの手この手を使った交渉の結果、日本からはサントリーと東芝がW杯観戦と、現地プロチームとの試合を果たすことができたのです。
トップリーグ
2003-2004シーズンから発足した社会人ラグビーの全国リーグ。正式名称は「ジャパンラグビートップリーグ」。14チームの総当たりリーグ戦と、上位4チームのプレーオフ・マイクロソフトカップがある。2007-2008シーズンの参加チームは、サントリーサンゴリアスの他、三洋電機ワイルドナイツ、東芝府中ブレイブルーパス、トヨタ自動車ヴェルブリッツ、神戸製鋼コベルコスティーラーズ、NECグリーンロケッツ、ヤマハ発動機ジュビロなど。
- 櫻堂
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リーダーとして、自分の信念に向かって突き進むというのは本当にすごいことだと思います。日本型社会ではよく、あちらこちらに配慮しないとまわりから反発が起きて、実際にうまくいきません。ところが清宮監督はまさに一点突破型。やはり特別な存在なのかも知れませんね。
- 清宮
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私がということではないと思います。例えば、早稲田の監督であれば、ある意味特別な立場なんです。やろうと思えば何でもできるし、何にでも手が届く。だから私は引き受けたのです。早稲田の監督にしかできないこと、というのは確かにあるのです。たとえば、二部リーグのチームの監督が声を上げても届かないところでも早稲田の監督の声なら届きます。だから物事が動くということがもちろんあります。その責任もあって、自分にできることは何か、自分にしかできないことは何かをいつも考えるようにしています。
- 櫻堂
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自分にできることを常に考え続けるというのはすごく重要な考え方だと思います。
- 清宮
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1年ほど前、日本の再生医療の第一人者にお会いしました。その技術はまだ美容にしか使われていませんが、いずれ整形外科の領域にも半月板損傷などで選手生命を絶たれる選手を救うために使われるようになるのではとピンときたからです。すぐにその教授にメールでアプローチし、サンゴリアスのチームドクターと一緒にお会いする機会をいただきました。
これはサンゴリアスの監督という私の立場があったからできたことです。ここから先どう進むかはまだわかりませんが、少なくとも監督としての責務を果たしているという思いはありますね。