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異業種に学べ!
世界最高のホテル リッツ・カールトン・ホテルに学ぶ真のホスピタリティとは?
なぜ、病院はリッツ・カールトンになれないのか?
今回私が選んだテーマは、リッツ・カールトンのサービス。多くの医療機関では患者サービスを充実させたいと考えています。しかし、気持ちはあってもなぜかなかなかうまくいかない。真剣にサービスを充実させるのであれば、エクセレントなサービス業を学習するのが一番なはず。今回は世界最高の卓越したホテルをモデリングしようという斬新な試みだ。素晴らしいところを挙げれば、キリがない。今回は、多くの議論と思考を結晶化したものをお伝えしたい。卓越したサービスはどのように創出されるのだろうか。
病院がエクセレントなサービスを提供するための4つのポイント
1.サービス・イノベーション
ここが最大のポイントだ。リッツ・カールトンは改善に改善を重ねて今の地位を築いたのだろうか? その答えはノーだ。 このホテルが初めにやったのは、これまでの業界常識を覆すことであった。つまり、業界で普遍化されているメンタルモデルをやる気と情熱をもって、根底から変えようとしたのだ。これは改善なんかではなく、まさにイノベーション(革新)だ。クレドが脚光を浴びており、クレドは確かに素晴らしい。しかし、クレドはその象徴に過ぎない。そのため精神の宿らないものではうまくいかない。
2.選択
サービスを突き詰めると人に行き着く。リッツ・カールトンは、これを痛いほど理解している。だから人選びは真剣そのもの、慎重に慎重を期する。それでは何を基準に選ぶのか? 学歴や資格ではない。パーソナリティで選ぶのだ。やる気と情熱を波長に合わせられる人そのものを、その他大勢の中から見つけ出す。つまり、素材が悪ければシェフの腕が良くても料理の出来には限界があるということだ。
3.ビジネスパーソン
世の中エンパワーメント(権限委譲)流行りだ。それでは、リッツ・カールトンがエンパワーメントを活用しているか? とんでもない。エンパワーメントどころではない。それ以上だ。従業員一人ひとりは社内で実業家としてのマインドを持ち、それを期待される。 会社もそれに応えている。その証拠に従業員一人ひとりがお客様のためにその場で決済できる金額は2千ドル。上司の決済は不要。これは、企業の中間管理職でも不可能ではなかろうか。
4.ケミストリー
まさにこの言葉が相応しい。従業員一人ひとりの個性を生かしながら、全体として新たな価値観を生んでいる。どこかの国のチーム何とかとは大違いだ。世の古今東西を問わず、プロフェッショナル同士が協働したときのパフォーマンスは恐ろしく出来がいい。
ホテルとホスピタルは語源が同じで、起源は15世紀フランスに重病人を看護するために作られたオテル・デュー(Hôtel Dieu)と呼ばれる療養院にあることはよく知られている。私は以前から、医療施設は単に医療技術を提供するためだけではなく、ホスピタリティを提供するサービスの担い手でもあるべきと提唱してきた。私はリッツ・カールトンの哲学に注目し今回、リッツ・カールトン大阪を「日本一」のホテルに育て上げた高野登氏に、真のホスピタリティとは何か、その実践に必要な鍵とは何かをお聞きした。それらを今後の医療経営施設の参考材料にしていくことを考えてみたい。
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世界最高のホテル リッツ・カールトン・ホテルに学ぶ真のホスピタリティとは?