医療経営戦略研究所
MENU
REAL
INTERVEW
高野登(ザ・リッツカールトン・ホテル・カンパニー日本支社長) VS 桜堂渉(医療経営戦略研究所)

4.トップが腹をくくれるかどうか

櫻堂

組織を新しく作るのではなく、既に出来上がっている組織を少しでも変えていきたい場合、どこから着手していけばいいのか、アドバイスをいただけますか。

高野

私なら、まずトップに腹をくくってもらいます。そして、そこで働いている人たちが、どういう役割を担っているのかをもう一度とらえ直してもらいます。価値のない人もいませんし、能力のない人もいないはずだからです。

人が自分の10年後の健康を考えたとき、食事や飲み物、サプリメント、そして嗜好品や運動といった生活習慣病を真剣に考えます。企業も同じで、10年後、20年後の健康を決めるのは今いる社員と、これから入社してくる社員で、彼らはいわば栄養素と同じです。将来を支える彼らスタッフとトップがきちんと向き合っているかどうかをもう一度見直さなければならないでしょう。企業の将来を支える従業員一人ひとりの顔が見えないことが、企業にとって一番怖いことだからです。このことを常に意識しながら、改革のためのステージ作りをしていかなければなりません。

櫻堂

具体的には何から着手すべきですか。

高野

リッツ・カールトン・ホテルが生まれようとしていたとき、理想的なホテル像についてとことん議論したように、将来の病院の姿はどうあるべきかを、ありとあらゆる制約を排して描いてみることでしょう。スタッフ、組織、リーダーがどんな考え方の下で、どんな連携プレイができるのか。すると現在とのギャップが見えてきます。腹をくくるということは、そのギャップを埋める覚悟があるかどうかです。

私たちが97年にリッツ・カールトン大阪を立ち上げたとき、5年後には東京のホテルを抜いて日本一になろうと腹をくくりました。そのための処方せんを書き、出来上がった青写真と現在の姿との大きなギャップを埋めるためにありとあらゆる努力をしました。正確には6年2ヶ月かかりましたが、日経ビジネス誌などで日本一との評価をいただきました。

櫻堂

そのあるべき姿を凝縮し、わかりやすい言葉に落とし込んだものがクレドなのですね。

高野

そうです。トップが心の底から、この病院を良くしようと決意し、決めたら全職員に伝えます。当院が今よりもさらに良い病院になるには何をどのように変えるのかを具体的に伝えます。そして、そのためにはトップ自身やらなければならないこと、スタッフがやらなければならないこと、皆が知恵を出し合わなければならないことを、トップが自らの言葉で、語りかけるのです。それをもっとわかりやすい言葉に落とし込もうと思うなら、理念やビジョンをクレドカードのようなものに表してみようと提案するのもいいでしょう。「最近、業績が不振だから、君たち何か取り組んでみなさい」と、2、3番手に任せるのでは、スタッフに伝わる温度が違います。トップが腹をくくれば300度になりますが、2、3番手になると250度、200度に下がってしまう。トップが300度でなければスタッフが100度を保つのは難しいのです。

インタビュー一覧

フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 取締役副社長 竹村 富士徳氏

フランクリン・コヴィー・ジャパン
株式会社 取締役副社長
竹村 富士徳
Fujinori Takemura

株式会社加賀屋 代表取締役会長 小田 禎彦氏

株式会社加賀屋 代表取締役会長
小田 禎彦
Yoshihiko Oda

社団法人 全国腎臓病協議会 宮本 髙宏氏

社団法人 全国腎臓病協議会
宮本 髙宏
Takahiro Miyamoto

慶應義塾大学 総合政策学部長 國領 二郎氏

慶應義塾大学 総合政策学部長
國領 二郎
Jiro Kokuryo

サントリーサンゴリアス監督 前早稲田大学ラグビー蹴球部監督 清宮 克幸氏

サントリーサンゴリアス監督
前早稲田大学ラグビー蹴球部監督
清宮 克幸
Katsuyuki Kiyomiya

ザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニー日本支社長 高野 登氏

ザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニー日本支社長
高野 登
Noboru Takano

千葉商科大学政策情報学部長 井関 利明氏

千葉商科大学政策情報学部長
井関 利明
Toshiaki Izeki

日本大学大学院グローバル・ビジネス研究科 平田 光子氏

日本大学大学院グローバル・ビジネス研究科
助教授/経営学博士
平田 光子
Mitsuko Hirata