- 透析JOURNAL
- interview
- 重い事実を直視する中から
- 患者の「自律」がキーワードに
4.患者の「自律」がキーワードに
- 櫻堂
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これからの全腎協の活動として、第1点目は、先ほど会長がおっしゃったように、透析患者の社会的認知度をきちんと上げること。2点目は、透析患者が自己管理をきちんとできるように教育、意識の改善をしていくこと。3点目は、インフラの整備や新しいシステムの構築である、という気がします。そのような方向で活動していけば、おそらく透析患者さんの未来は明るいのではないか。
以前、全腎協の大会に招かれた時、わたしは「透析患者さんは恵まれている。例えば、がんの患者さんは自己負担で経済的に苦しめられていて、透析患者とは格差がある。そのようなことも踏まえて、透析患者さんはもう少し社会的に貢献したり、いろいろな意味で『自律』が必要ではないか」と、少し辛口なことをお話ししました。
それと同じ文脈ですが、やはり「自律」がキーワードになる気がします。昨年亡くなられた全腎協の油井清治・前会長から「昔の患者さんはよく勉強したけど、最近は勉強しないんですよ」という話を、何度もうかがいました。それは透析患者さんに限ったことではなく、一般の社会人もあまり学習しなくなったし、情報化・コミュニケーション社会といわれる一方で、それを担う人と組織に劣化が生じている。今日の平和と安全と利便性を享受している人たちは、災害が起きたら生き残っていけない、といった状況に陥っているのです。
ですから、会長がおっしやるように、自分の身を守るためにも自律、自己管理は重要で、それを前提にシステムが稼働すればもっとよい、と思います。
全腎協を社会に発信し社会に支持され社会に役立つ組織にしていく
- 宮本
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わたしは10万人の組織の最高責任者であるわけですが、一人ひとりの会員さんがどうなっているのか、知るすべがないのです。会員組織として会費もいただいていて、その一人ひとりにどんな責任が果たせるのか。今回の東日本大震災発生以来、全腎協は何をなすべきか、何かできるのか、常にそのようなことを考えています。
今年は、ちょうど全腎協結成40周年の年なのですが、40年前、まさに末期の腎不全患者が生きられるようにするため、我々の先人が立ち上がって、この会を結成したわけです。おかげさまで、先人が命をかけて、いろいろな制度を勝ち取った。これは、同時に社会が支持をしてくれたからでもあります。つまり、悲惨な状況にある患者さんが命をかけてやっていることに対して、社会が共感する部分も多かった。その結果として、数年後には、我々が要求していたことのほぼ100パーセントが実現できました。
その結成から40年が経過した今、全腎協は次の時代に向けて、どのような新たな目標を指し示すか。やはり、社会的な支持を得ない限り、透析患者に対しては逆のベクトルが働いて、生きていけなくなるのではないか。全腎協が社会に役立つことができるような組織に変わっていかない限り、透析患者自身が生き残れないし、全腎協の組織も生き残れない。
そのようなことを考えている時に、東日本大震災という予期せぬ出来事があったのです。これを契機として、あらためて、どんどん社会に発信し、社会の支持が得られるようにして、透析患者がどんな時でも生きられるようにしていきたい。また、組織として、社会を変えていくような取り組みをしなければいけない、と考えています。その意味で、全腎協40周年の今年はターニングポイントになる時かな、と思います。
- 櫻堂
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冒頭でお話ししたように、透析は大変なんだなということは、国民の皆さんは何となく理解してくれています。今度は、誰がどの時点でリーダーシップをとるかということに皆さん注目しているはずです。それについては、患者会が哲学を持って発信し、社会貢献をしながら、全透析患者のためになることをしていって、リーダーシップをとることになるのではないか。そのようにしていった時、先ほど宮本会長がお話しになったように避難所で透析患者であることを黙っているケースもなくなってくる。また、お話を聞いていて、やはり、全腎協は哲学・ミッションを打ち出して、システム化に取り組むのがよいのではないか、と思いました。
- 宮本
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我々は透析患者の当事者団体ですから、まず会員や30万人の透析患者を守るために取り組み、それが、一般の人たち、社会全体を守るようなシステムに発展させていきたい。また、我々自身の活動が、社会を変えることにつながるようにしていきたい。社会で、「全腎協、やるじゃない!」という声があちこちから聞こえるような組織であり、活動を展開していきたいと思います。
- 櫻堂
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全国には突出して有名な患者会や戦闘的といわれるような患者会もありますが、やはり、尊敬できる患者会が必要です。全腎協にはその模範を示していただきたいと願っています。
さまざまな患者会が全腎協を見習おうとするくらいに、お手本となっていってください。本日は長時間、良いお話をありがとうございました。
宮本髙宏氏 プロフィール
略歴 1958年生まれ、兵庫県宍粟市在住。1982年、大学卒業後、兵庫県宍粟郡山崎町立小学校に赴任して問もない同年9月、慢性腎不全から人工透析治療導入。その後、99年3月に兵庫県腎友会事務局長就任。2000年12月、NPO法人兵庫県腎友会常務理事兼事務局長。05年3月、社団法人全国腎臓病協議会理事、06年、同副会長、09年6月、同会長に就任し、結成40年を迎えた全腎協の先頭に立って活躍する。