医療経営戦略研究所
MENU

HDC(home dialysis center)
が都市生活者を救う!

2019/01/15

果たして、日本の透析医療は世界一か?

医療は誰のものだろうか?医療とは医者のものでもなく、政府のものでもない。ましてや保険者のものでもない。本来は、患者のものであるはずだ。

しかし、その実態は医療が規制業種として位置づけられ、政府主導且つ医学界の主導で行われてきたと言える。

もう一度、同じ問いかけをしたい。医療は誰のものだろうか?それは、医療サービスを受ける受益者のものであるはずだ。つまり国民と患者のものである。

解りきっているはずなのだが、患者にとっても、国民にとっても医療は相変わらずのブラックボックスである。

つまり、受益者のものとは言い難いのである。

したがって、このブラックボックス構造は、必然的に供給側の都合が患者のニーズより優先することになる。

私は医療現場を批判しているのではない、むしろ、医療現場では懸命に業務を行なっている。

それでは、問題の原点はどこになるのか?それは、医療システムを形成している主体である。日本の医療の課題はここである。医療に関連する情報は、建前上は情報の透明化が進んでいるかのように見えるが、患者や国民に共有されることがない。

私は医療システムの批判者としてではなく、患者の利益を最大化し医療コストを最適化する事を目指したいと思う一人だ。

重要なのは患者の利益の最大化である。

患者不在で医療システムを構築している背景には、パターナリズムの存在がある。つまり、専門家が専門的な見地から、提供するものは正しいはずである。この強固な思想からは新しい発想や、イノベーションが生まれる事はない。

イメージ

何故なら専門家というのは現場の追認者であるからだ。論評はできても、創造する事は出来ない。
イノベーションとは、それによりこれまでより格段に良い品質の製品やサービス、またこれまでとは異次元のサービスを消費者に提供する、しかも格段に低コストで。そして、社会がより良い方向に向かうことを助けるのである。

イノベーションの専門家はクレイトン・M・クリステンセン教授だ。クリステンセンは、「イノベーションのジレンマ」と言う書籍で一世を風靡したハーバード大学MBAの教授である。

名前を聞いたことがあるだろうか?

彼の著書の中に医療のイノベーションがあり、驚いたことに、透析医療をテーマにした一節がある。
以下 引用。

「在宅血液透析は、透析センターを一掃する潜在力を持っている。1972年には、米国の透析患者のうち、40%が在宅透析を実施していた。
マサチューセッツ ローレンスに拠点を置くネクステージのシステムワンなどの透析機器は、電子レンジ程度の大きさで、家庭内でも自宅を離れた場所でも、移動することが可能になっている。
診療所の透析は週3回の通院が必要であるに対して、在宅血液透析は毎日実施される、人体の通常の生理と合致しており健康上のアウトカム(健康結果)が大きい」

驚いた。クリステンセンは医療の専門家ではない、先ほどお話しした通り経済と経営の専門家である。しかし、その眼光は鋭く、本質を見抜いていると言える。

引用の通り、在宅血液透析は、透析医療のイノベーションになり得ると言う文脈だ。しかし、現実は彼も指摘してはいるが、在宅血液透析のアウトカム(健康結果)について、医療界の患者に対する情報提供は不十分である。

だからこそ、この情報を患者にわかるように解説し、患者が自己選択できるようにすることに大きな意味がある。

長時間透析や、頻回透析のアウトカムが高いことは、既に医学研究で明確になっている。しかし、その情報を患者はほとんど知らされていない。

この情報のギャップは実は大きな市場機会を生むことを、医療関係者は深く考えなければならない。

従来型の透析医療機関の管理者が施設稼働率を極限まで高めようとする経営行動は理解できるし、ある意味それは経営行動としては合理的である。

しかし、施設透析という単一サービスを提供することにもはや限界が生じてきている。透析サービス、透析のシステムの形態は様々である。

患者のニーズに応じてプロダクトライン別(透析システム別)に管理し、患者に最適にプロダクトを提供することが可能になれば、当然患者のQOLは向上する。

そのためのプロダクトラインの最適化戦略こそがこれから求められることである。夜間透析、在宅血液透析、長時間透析、オーバーナイト透析、CAPD、ハイブリッド透析、等様々な形態が考えられる。

我々の独自調査によると、東京で在宅血液透析のニーズは高いものの、独居や賃貸住宅で配管工事が不可能なために、在宅血液透析の選択基準を満たすことが出来ない事例が散見される。 (ガイドラインでは、独居でのHHD実施が認められていない)

このような場合、フランスのHDC(Home Dialysis Center)のように、在宅血液透析と施設透析の中間型の透析施設があれば、この問題は一気に解決するはずである。

患者の制約条件を無効化することで、患者の選択肢を増やす事は、患者が施設に依存せずに自立する契機になる。その意義は極めて大きい。