医療経営戦略研究所
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透析医療の未来を切り開く──
Good Design賞を受賞した
「セルフ透析」という革命

2024/01/31

日本の透析医療史に刻まれる快挙

日本の透析医療が新たな時代を迎えています。これまで医師主導が当たり前とされてきた透析医療の枠組みを打ち破る「セルフ透析」モデルが、透析医療機関として史上初めてGood Design賞を受賞しました。この快挙は、デザインの力を通じて社会課題を解決し、医療環境を根本から変革する試みが認められた証です。

審査員が高く評価した「患者主体の透析環境」

受賞理由として、審査員は次のように評価しました。

「医師主導に偏った透析環境に疑問を抱き、改善すべき課題として捉え、高いレベルで解決した実行力が評価された」

Good Design賞審査員

従来の透析環境では、患者は受け身の立場に置かれ、医療機関のスケジュールに合わせて生活を送らざるを得ないという現実がありました。しかし、本施設は**「患者主体の透析」**をコンセプトに掲げ、以下のような画期的なシステムを導入しました。

  • 自由な時間設定:
    患者自身が透析の時間を決められることで、就労や日常生活の自由度が飛躍的に向上。
  • 快適な透析空間:
    病床感を排除し、書斎のようなプライベート空間を整備。仕事や趣味に没頭できる環境を提供。
  • 医療リソースの効率化:
    医療スタッフの負担を軽減し、限られた医療資源を有効活用。結果として医療コストの削減にも貢献。

このシステムの導入により、「透析=生活の制約」から、「透析=自分らしい人生の選択」へと価値観が大きく変化しました。

透析患者のQOL向上を裏付ける実績

QOLイメージ

「セルフ透析」がもたらす生活の質(QOL)の向上は、科学的なデータや実際の患者の声によっても裏付けられています。

櫻堂氏が監修した研究では、従来の週3回・4時間の透析と比べ、セルフ透析を行う患者の健康指標が大幅に改善することが示されました。HDP(透析効率指標)80以上を維持することで、長期的な生存率の向上、合併症のリスク低減、体調の安定化が期待できるとされています。

この**「エビデンスに基づいた透析の最適化」**が、Good Design賞の審査員にも高く評価されました。

患者の声──透析が「生きるための手段」から
「豊かな人生の一部」へ

この革新的な透析環境の変化を、最も強く実感しているのは実際に通院している患者です。以下に、患者の声を紹介します。

仕事と透析を両立できる自由

「これまで大きな病院で透析を受けていましたが、時間が決められ、仕事を続けるのが難しかった。でもここではパソコンを持ち込んで仕事ができるし、必要に応じて時間の変更も可能。透析のためにキャリアを諦めなくてよくなったのが大きいです。」

(Bさん)

「ここならオフィスと同じ感覚で仕事ができる。オンラインミーティングも問題なくこなせるし、同僚に自分が透析患者であることを気づかれないくらい、普通に仕事ができています。」

(Kさん)

透析による健康状態の向上

「以前は透析が終わるとぐったりして何もできなかった。でも今は、体が軽く、週4回透析にすることで、食事制限もほとんど必要なくなった。肌や髪の状態も良くなり、美容の面でも希望が持てるようになった。」

(Eさん)

「むくみや倦怠感がなくなり、仕事のパフォーマンスも向上しました。HDPも改善し、透析前よりも今の方が元気だと感じます。」

(Rさん)

透析中の時間を有効活用

「以前はベッドに横になっているだけで何もできない時間だった。今は好きなことができる。ドラマを観たり、韓国語を勉強したり、仕事をしたり。透析の時間がむしろ楽しみになりました。」

(Gさん)

週3回の4時間が当たり前ではない。もっと自由に、自分の体調に合わせた透析ができる環境があることを、もっと多くの人に知ってほしい。」

(Qさん)

透析医療の新時代──社会へのインパクト

透析患者の自立を促す新しいシステムは、患者のQOL向上だけでなく、社会全体への波及効果も大きなものです。

1. 就労機会の拡大

これまで透析患者の多くが時間的な制約のために就業困難でした。しかし、セルフ透析による柔軟な時間設定が可能になったことで、フルタイム勤務が可能となる患者が増加。これは日本の労働市場においても大きなメリットとなります。

2. 医療コストの削減

透析患者の合併症リスクが低下することで、医療費の負担が軽減。また、医療スタッフの業務負担を軽減し、より効率的な運用が可能となりました。

3. 社会的認知の向上

透析は「制約のある治療」ではなく、「適切に管理すれば健康な生活を送れる治療」へと認識が変わりつつあります。透析患者が社会の一員として活躍できる未来が現実のものとなりつつあります。

未来へ向けた挑戦

Good Design賞の受賞は、透析医療の進化の一歩に過ぎません。櫻堂氏は、「セルフ透析のさらなる普及を進め、患者がより自由に、健康的に生きられる社会の実現を目指す」と語ります。

これからの透析医療は、患者が自らの人生を選択できる時代へと突入します。私たちはこの受賞を通じて、透析医療の未来をさらに切り拓き、「透析=自由な選択肢」という新しい概念を社会に広めていきます。

生命予後が劇的に改善するセルフ透析 櫻堂渉

※このプロジェクトの中心人物である櫻堂 渉(さくらどう わたる)は、透析医療に携わり25年以上の経験を持ち、日本薬科大学の客員教授としても活躍。また、透析医療の最適化に関する書籍を執筆し、日本国内でのセルフ透析普及の第一人者として知られています。